部活動のない夏休みを過ごしている私です。


Twitter において、教員の方がアカウントを立ち上げる事例が増えています。

その動機は「部活動問題について考えたい」というものが多いです。


匿名性の高いTwitter で、自分の考えや気持ちを述べたい人が増えているのだと思います。

たくさんの方が部活問題を考える状態を好ましく思います。


その中でも特に若手の教員が、部活について悩んでいるつぶやきが多いように感じられます。

日本全国、ところ変われど部活の問題は教員に降りかかってくるものなのですね。



今回は、「なぜ部活動を教員全員でやらなければならない雰囲気が中学校にはあるのか」について論じてみたいと思います。


ブログにはよく部活についての質問のコメントが寄せられます。

それは「部活の顧問やるのが嫌だったら断ればいいのでは?」というものです。

学校現場の外から見れば、部活の顧問を断ったら問題解決なのに、なぜ断らないのかと思うかもしれません。

それができにくいのには以下のような要因があるのです。


要因① 歴史的背景

過去に学習指導要領において、中学校でもクラブ活動が実施されていた時期がありました。

以下に 内田良 著 『教育という病』という本から抽出した情報を載せます。


学習指導要領の実施年数と、クラブ活動・部活動における記述です。

◯はその内容の記述があることを示し、☓はその内容がないことを示します。


1972年   クラブ活動(教育課程)   ◯
                部活動(教育課程外)    ☓

1981年   クラブ活動(教育課程) ◯
                部活動(教育課程外)    ☓

1993年   クラブ活動(教育課程) ◯
                ↑  部活動 ◯ (教育課程外:代替措置

2002年   クラブ活動                   ☓
                部活動(教育課程外)   ☓

2012年   クラブ活動                   ☓
                部活動(教育課程外:教育課程と関連づける) ◯


1972年からの学習指導要領においてクラブ活動の記述があります。

クラブ活動は部活動とは違い、ちゃんと教育課程に示されている活動です。

つまり、週の中の授業時数に組み込まれている、ということです。

その活動は今も小学校において行われている「クラブ」と似たようなものです。


ところが、1993年実施の学習指導要領では、クラブ活動の履修を部活動で代替できる措置、いわゆる「部活動代替措置」がとられるようになります。


原文を載せると

なお、部活動に参加する生徒については、当該部活動への参加によりクラブ活動を履修した場合と同様の成果があると認められるときは、部活動への参加をもってクラブ活動の一部又は全部の履修に替えることができるものとする

とあります。


つまり、部活動に参加することで、正規の教育課程であるクラブ活動を履修したことと同様の作用をもつ、とされたわけです。

そこで、各学校は生徒に部活動の加入を義務づけ、「あたかも教育課程内の活動であるかのように」部活動を続けたわけです。

もちろん、正規の教育活動としてのクラブ活動の代わりですから、教員も全員で取り組まねばならない、ということで、以下の全員顧問制度につながるわけです。


要因② 全員顧問制度

何度も記述してきましたように、多くの中学校では、全員が顧問を担当する全員顧問制度がとられています。

2006年の時点で中学校教員の92.4%がなんらかの部活の顧問をしているというデータがあります( 「教員勤務実態調査」  )。

しかもこの教員には養護教諭や常勤講師も含まれています。

つまり「保健室の先生」も「教員採用試験を控えて勉強が必須な講師の先生」も、もれなく顧問をしているわけです。


ところが、この全員顧問制度には法的根拠はありません。

ではなぜこの制度が根強く維持されてきたかといえば、要因①の「部活動代替措置」の名残であると考えられます。

「昔は生徒も教員も、みんなで部活をしていたものだ。だから部活は全員でやるものだ」という雰囲気・環境がいまだに学校の現場をとりまいているのです。


要因③ ベテラン教員の助言

部活動について疑問をもっている若手教員は少なくありません。

このブログへのコメントやTwitter のつぶやきでも見て取れます。

それならなぜ現場単位で部活動が変わっていかないのかというと、ベテラン教員である先輩方の「助言」がある場合があるからです。


それは

「若手は部活をどんどんするべきだ。生徒と汗を流すことが重要だ」
「私も昔は大変な思いをして部活をやった。さあ、君もぜひ頑張りなさい」
「部活は生徒を違う視点から見ることができる良いチャンスなんだ」
「土日の部活は良い気分転換にもなる。どんどん積極的にやりなさい」

のようなものです。


上記のような歴史的背景をたどってきたが故、先輩方はあまり部活動に対して懐疑的な視点をお持ちでない場合が多いかもしれません。

もちろん、全てのベテラン教員の方を指してこう言っているわけではありません。

部活動についての私の考えに賛成の意を示してくれる方もいらっしゃいます。

また、部活動について懐疑的な視点を持っている方でも、それを表明していない方もいらっしゃることでしょう。


ベテランの諸先輩方からこういった「助言」をいただきますと、そこから自分の考えで動くことは難しくなります。

学校現場もけっこうな縦社会ですから、若輩者である私は、部活について発言することも はばかられてしまうものです(同業の方なら、この感じはお分かりでしょう)


部活問題について、言いたくても言えないような環境が、学校にはあります。


以上、3点から「なぜ部活動を教員全員でやらなければならない雰囲気が中学校にはあるのか」を論じてみました。

要因①の歴史的背景につきましては、光文社新書の内田良 著「教育という病」に詳しいので、ご参照ください。


要するに、教員は部活動顧問をやってもいいし、「やらなくてもいい」のです。

同様に、生徒も部活動をやってもいいし、「やらなくてもいい」のです。


部活に一生懸命な教員や生徒を否定するわけでは決してありません。

部活の教育的価値を認めたうえで、違う価値観を提示しいているに過ぎません。


まずはこの事実を同業者に、生徒に、保護者に、そして教育に興味のない方々に広めたい。

いわれのないバッシングで傷ついている教員も多くいます。

家庭の事情や採用試験の勉強で部活を断りたいのに、断れずに苦しんでいる教員も多くいます。


知ってください、部活動について。

その上で、苦情や文句があるなら、いくらでも言ってください。

上辺だけの認識で、自分の中だけの物差しでバッシングを受けるのは、もうこりごりです。


「部活をしない、やる気のない先生なんて、先生をやらないでもらいたい」
「部活が嫌なら、黙って塾の講師にでもなればいいじゃん」
「熱意のない教師ほど、部活についてぐちぐち言うんだよなあ」
「部活も立派な教師の仕事。文句を言わずにやればいいんだ」


こんなことを平気でコメントする同業者や保護者の方に、少しでも理解が広まればいい。

ただそれだけです。

(もちろん、理解ある同業者や保護者の方もたくさんいらっしゃいますが)。


8月に入りました。

じわりじわりと夏休みが進んでいく中、どうかご自愛ください。


この記事をお読みになり、感じたことをコメントでお書きくださると嬉しく思います。

なお、コメントの名前の欄は、きちんとハンドルネームをお書きください。

名前の欄にまで、考えをお書きの方がいらっしゃって混乱をきたしているからです。


次回は、外部指導者について書きたいと思います。

たくさんのご意見をお寄せください。